5-(9).大神(おほみわ)神社、墨坂(すみさか)神社、大坂山口(おほさかやまぐち)神社の配置


 古事記の崇神(すじん)天皇の条には、以下の話が記載されています。


 
崇神(すじん)天皇の御世(みよ)に疫病が大流行し、多くの民が亡くなります。そして、崇神(すじん)天皇が神意を問う為に床に入ると、夢に大物主(おほものぬしの)大神が現われて、意富多々泥古(おほたたねこ)という人に自分を祀らせるならば疫病はおさまると告げられます。そこで、意富多々泥古(おほたたねこ)を探させるために人を遣わすと河内国(かわちのくに)美努(みのの)村で見つかります。)


 すると天皇はたいそう喜んで、「これで天下は穏やかになり、国民は栄えるだろう」と仰せられた。
 そして、ただちに意富多々泥古(おほたたねこ)を神主として、御諸山(みもろやま)意富美和之(おほみわの)大神(おほかみ)(いつ)き祀られた。
 また、伊迦賀色許男(いかがしこをの)(みこと)に命じて、(あめ)八十(やそ)びらか(※祭りに用いる多くの平たい土器)を作って、(あま)つ神の(やしろ)(くに)(かみ)(やしろ)を定めてお祀りになった。
 また、宇陀の墨坂神(すみさかのかみ)に赤色の楯と矛を(たてまつ)り、また、大坂神(おほさかのかみ)に黒色の楯と矛を(たてまつ)り、また、坂の上の神や河の瀬の神に至るまで、ことごとく漏れ残すことなく弊帛(みてぐら)(たてまつ)ってお祀りになった。
 これによって疫病がすっかりやんで、国内は平穏になった。


 ここでは、以下の3つの神社が祀られたことになっています。
神 名 詳 細
御諸山(みもろやま)
意富美和之(おほみわの)大神(おほかみ)
 御諸山(みもろやま)は奈良県桜井市の三輪山のこと。
 大神(おほみわ)神社では、三輪山自体が神体とされる為、拝殿のみで本殿はない。主祭神は大物主(おほものぬしの)大神で、日本国内で最も古い神社のうちの1つであると言われている。
宇陀の墨坂神(すみさかのかみ)  奈良県宇陀郡にある墨坂(すみさか)神社。祭神は、天御中主(あめのみなかぬしの)神、高皇産霊(たかみむすひの)神、神皇産霊(かみむすひの)神、伊邪那岐(いざなぎの)神、伊邪那美(いざなみの)神、大物主(おほものぬしの)神の六柱で、まとめて墨坂(すみさかの)大神(おほかみ)と呼ばれる。
 日本書紀の神武紀には兄磯城(えしき)が炭に火をつけて天皇軍を阻んだとの故事がある。
大坂神(おほさかのかみ)  大坂山口(おほさかやまぐち)神社のことであるが、同神社は 奈良県北香芝(かしば)市に逢坂(おうさか)と穴虫の2ヵ所にあり、古事記に記載されたのがどちらなのかは諸説あってはっきりしない。
 逢坂(おうさか)の方の祭神は、大山祇(おほやまつみの)(みこと)須佐之男(すさのをの)(みこと)神大市比売(かむおほいちひめの)(みこと)。穴虫の方は、大山祇(おほやまつみの)(みこと)須佐之男(すさのをの)(みこと)天児屋根(あめのこやねの)(みこと)

 この3つの神社の配置を調べてみると、次の図の通りです。

   


 大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫)と三輪山と墨坂(すみさか)神社が一直線に並んでいることが分かります。
 具体的な方位角(注)は94度です。

       (注)方位角・・・北を0度とした時の角度。東は90度、南は180度になる
  
出発点 到達点 方位角 距離
大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫) 三輪山 94°04′12.70″ 16,720.170(m)
三輪山 墨坂(すみさか)神社 94°41′15.69″ 8,623.520(m)
※緯度経度の算出は、「MAPPLE 地図」を使用
※方位角と距離は、「測量計算(距離と方位角の計算)」のPGMを使用

<参考:各神社の緯度経度>
神社名 北緯 東経 備考
大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫) 北緯34度32分32秒 東経135度41分18秒  
三輪山 北緯34度31分53秒 東経135度52分12秒  
墨坂(すみさか)神社 北緯34度31分30秒 東経135度57分49秒  

 そして、大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫)から94度の方角にあるのが、伊勢の月読(つくよみの)宮です。
出発点 到達点 方位角 距離
大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫) 月読(つくよみの) 94°29′03.17″ 96,146.664(m)
大坂山口(おほさかやまぐち)神社(穴虫) 内宮(ないくう)皇大神宮(こうたいじんぐう) 95°42′26.40″ 96,068.779(m)
内宮(ないくう)の方は参考まで。
<参考:各神社の緯度経度>
神社名 北緯 東経 備考
月読(つくよみの) 北緯34度28分12秒 東経136度43分54秒  
内宮(ないくう)皇大神宮(こうたいじんぐう) 北緯34度27分6秒 東経136度43分43秒  
 つまり、この3つの配置で、「5-(8).住吉大社の配置」で示した住吉大社の配置と同じく、日本列島を縦断する十字架の交点に位置する月読(つくよみの)宮(※)を暗示・示唆していると言えます。

   ※「5-(7)伊勢神宮の配置の秘密(グランドクロス)」を参照

 なお、5−(7)で示した仮説、「3つの神社を1セットとする時は、『一直線に並ぶのは不可で、二番目の神社は起点となる神社から見て、3度ずれなければならない』というルール」はここでも当てはまりません。

 ただし、これらの神社の祭神を見ると、大物主(おほものぬしの)神や須佐之男(すさのをの)(みこと)で国津神系であり、「3度ずらすというルール」は天津神系のみで、国津神系に適用する必要はないのかも知れません。


 ちなみに、上記、方位角94度のラインから外れている逢坂(おうさか)の方の大坂山口(おほさかやまぐち)神社ですが、こちらは、穴虫の方と66度のライン上に配置されています。
出発点 到達点 方位角 距離
大坂山口(おほさかやまぐち)神社
(穴虫)
大坂山口(おほさかやまぐち)神社
逢坂(おうさか)
66°16′29.12″ 612.731(m)
<参考:各神社の緯度経度>
神社名 北緯 東経 備考
大坂山口(おほさかやまぐち)神社
逢坂(おうさか)
北緯34度32分40秒 東経135度41分40秒  

 方位角66度は夏至の日に太陽が昇る方角(※)であり、こちらも意図的に配置されていることが分かります。

   (※)夏至の日に太陽が昇るのは、真東から約23.4度、北の地点。方位角は90度-23.4度で66.6度となる

---------------------- 以下、2010.5.19追加 --------------------------
≪訂正≫
 夏至の日に方位角66度の方向から太陽が昇るのは赤道付近の場合であり、緯度によって、その方位角は異なります。
 大坂山口(おほさかやまぐち)神社(逢坂(おうさか)の緯度で、夏至の日に太陽が昇るのは方位角60度の方向となります。(※「日月出没計算サービス」のPGMを使用。計算年月は2010年6月21日で計算)

 なお、上記ラインが方位角66度となっているのは、地軸の傾き(23.4度)を意識しているのではないかと思われます。
---------------------- 以上、2010.5.19追加 --------------------------



 住吉大社と合わせて、まだ2例だけなので単なる仮説に過ぎませんが、「グランドクロスのパワーを日本全国に行き渡らせる為の霊的結界」と言ったような発想があるのかも知れません。





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