5-(34).稲荷神社と「ヨハネの黙示録」(その3)


 当記事では、伏見稲荷大社で行われる代表的な祭礼と「ヨハネの黙示録」の関連について述べたいと思います。


1.大山祭

 毎年1月5日に行われる祭で、祭場となるのは本殿、及び、山中の御膳谷(ごぜんだに)奉拝所。新年に神の降臨を願うと共に、五穀豊穣と家業繁栄を祈る祭です。
 
 何故、新年に神の降臨を願うかと言うと、11月に行われる火焚祭で神の御霊(みたま)をお山にお送りしているからです。いったん山に帰った稲荷大神が新年に再び降臨するということを毎年繰り返している珍しい神様であると言えます。

 この大山祭についての一般的な解説は、稲霊である稲荷大神が山に帰って神気を養い、新年に再び降ってきて穀物の成長を助け、秋の刈り入れが済んだら再び山に帰っていくという、稲作のサイクルと関連したものです。

 一方、キリスト教的に解釈するなら、火焚祭と大山祭はイエスの死と復活の象徴。また、一旦、この世を去ったイエスが「ヨハネの黙示録」の予言通り、再び再臨することを象徴すると共に、キリストの再臨を祈願する為の祭であると言えるでしょう。


 また、興味深いのは、この大山祭が「7」という数字にこだわっていることです。

 注連張(しめはり)神事では、山内の
ヶ所の神蹟(しんせき)外玉垣(そとたまがき)に注連縄が張り巡らされ、また、御膳谷(ごぜんだに)奉拝所の祭儀では、御饌石(みけいし)と呼ばれる霊石の上に70枚の斎土器(いみどき)が置かれて神事が行われます。

 「7」は、神が7日間でこの世を創造したように、完成、完全を表す数字で、「ヨハネの黙示録」では「7」に関連する数字がこれでもかというくらい出てきます。

      7つの教会、7つの封印、7つのラッパ、7つの平鉢、7つの目と7つの角を持つ小羊・・・

 「7」は完成、完全を表す数字であると共に、「ヨハネの黙示録」を象徴する数字であると言えるでしょう。



2.初午(はつうま)大祭

 毎年2月初午の日に行われる祭で、稲荷大神の広大無辺なるご神威を仰ぎ奉るものです。この祭は、稲荷大神が和銅4年の二月初午の日に稲荷山の三ヶ峰にはじめて鎮座したことに由来します。

 初午大祭は、稲荷山の杉と椎の枝を重ねて大きな紙垂をつけ、本殿以下各摂末社に取り付けるという祭ですが、特筆すべきは、参詣者に授与される「しるしの杉」です。

 これは、参詣者に稲荷大神の霊験を分かち合うもので、商売繁盛、家内安全のお守りであるとされています。また、古くは平安時代に、当時盛んになった熊野詣の往き帰りには必ず稲荷社に参詣し、杉の小枝を体のどこかにつけるのが習わしだったようです。

 この「しるしの杉」に関連する「ヨハネの黙示録」の箇所を記載しましょう。
「私たちが神のしもべたちの額にを押してしまうまで、地にも海にも木にも害を与えてはいけない。」
それから私が、印を押された人々の数を聞くと、イスラエルの子孫のあらゆる部族の者が印を押されていて、14万4千人であった。(7章3−4節)

その後、私は見た。見よ、あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、誰にも数え切れぬほどの大勢の群衆が白い衣を着て、
なつめ椰子の枝を手に持って、御座と小羊との前に立っていた。(7章9節)
「また私は見た。見よ、小羊がシオンの山の上に立っていた。また小羊と共に14万4千人の人たちがいて、その額には小羊の名と、小羊の父の名がしるしてあった。(14章1節)
 これら2箇所の「ヨハネの黙示録」の記載は同じ出来事を示しており、人々の額に神の印が刻印された後、小羊に引き連れられシオンの山に立つという出来事が記載されています。(※詳細は拙著『「ヨハネの黙示録』開封』を参照)

 つまり、「しるしの杉」の「しるし」とは、良い実をならせた人々の額に押される神の刻印(しるし)のことであり、杉は、なつめ椰子の代用品なのです。

 なつめ椰子は、リンゴが知恵の木の実の象徴とされるように、生命の木の象徴とされる植物であり、学名にはPhoenix dactyliferaとフェニックス(不死鳥)がつけられています。よって、なつめ椰子の枝を手に持っていることは、永遠の命が与えられたことを象徴しているのです。

 また、何故、杉がなつめ椰子の代用品にされたのかを考えてみましょう。

 「杉」という字を分解すると「木」と「三」になります。右から読めば「三つの木」です。木は神が寄り代とするものであり、神の象徴。つまり、「杉」は「三つの神」を指す文字で三位一体の象徴なのです。

 ちなみに、神社でよく使われる木の枝と言えば榊ですが、この漢字を分解すれば「神の木」です。「榊」に比べて「杉」の方が三位一体を表していて、より奥義に近い象徴であると言えるでしょう。
 なお、伏見稲荷大社や広隆寺を創建した秦氏ですが、「秦」も分解すれば「三人ノ木」となり、三位一体を表す漢字です。(※飛鳥昭雄氏の指摘によるもの)

 以上、「しるしの杉」を人々に持たせることは、稲荷山をシオンの山に見立て、「ヨハネの黙示録」に予言された未来を現出させる為の祭、密儀であると言えるでしょう。

 どうも、日本に壮大な国仕掛けを施した人たちは、人々に何も知らせずに密儀に参加させるのが好きだったようです(笑)。



 (次の記事に続く)





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