キリスト教関連トリビア

 当記事では、キリスト教関連のトリビアを集めてみました。

INDEX
内 容 備 考
ことわざ「豚に真珠」は、聖書に由来している
ことわざ「目からウロコが落ちる」は聖書に由来している
ことわざ「砂上の楼閣」は聖書に由来している 2011.2.11追加
チェルノブイリは「ニガヨモギ」という意味ではない
ルシフェルは、名前から、神を表わす「エル」の文字を取られて、ルシファーと呼ばれるようになっていない
イエスは馬小屋で生まれていない 2011.2.11追加




ことわざ「豚に真珠」は、聖書に由来している

 ことわざの「豚に真珠」は、「価値のわからない者に貴重なものを与えても意味がない」と言う意味ですが、これは、以下の通り、イエスの言葉から来ています。
『マタイの福音書』 7章6節
 聖なるものを犬に与えてはいけません。また豚の前に真珠を投げてはなりません。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたを引き裂くでしょうから。
 ちなみに、英語では「cast pearls before swine」(直訳:豚に真珠を投げる)になり、そのままの意味のことわざがあります。




ことわざ「目からウロコが落ちる」は、聖書に由来している

 ことわざの「目からウロコが落ちる」は、「あることをきっかけとして、急に物事の真相や本質が分かるようになること」です。
 これは、キリストの使徒、パウロに起こった出来事に由来しており、本来は、誤りを悟り、迷いから覚める意味で使われていました。

 イエスの死後、パウロは当初、ユダヤ教徒としてキリスト教徒を迫害する側の人間でした。
 そのパウロがキリスト教徒を捕まえに向かう道中で、キリストが現れます。
『使徒行伝』 9章3-8節
 ところが、道を進んで行って、ダマスコの近くまで来た時、突然、天からの光が彼を巡り照らした。
 彼は地に倒れて、「パウロ、パウロ。何故、私を迫害するのか」と言う声を聞いた。
 彼が「主よ。あなたはどなたですか」と言うと、お答えがあった。「私が、あなたが迫害しているイエスである。立ち上がって、町に入りなさい。そうすれば、あなたのしなければならないことが告げられるはずです。」
 同行していた人たちは、声は聞こえても、誰も見えないので、ものも言えずに立っていた。
 パウロは地面から立ち上がったが、目は開いていても何も見えなかった。そこで人々は彼の手を引いて、ダマスコへ連れて行った。
 このように、目が見えなくなったパウロですが、キリスト教徒の手によって再び見えるようになります。
『使徒行伝』 9章17-19節
 そこで、アナニヤは出かけて行って、その家に入り、パウロの上に手を置いてこう言った。「兄弟パウロ。あなたが来る途中でお現われになった主イエスが、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」
 するとただちに、パウロの目からうろこのような物が落ちて、目が見えるようになった。彼は立ち上がって、バプテスマを受け、食事をして元気づいた。
 こうして、パウロは、キリスト教を迫害する側から、キリスト教を信望し、広める側へと変わったわけです。




ことわざ「砂上の楼閣」は、聖書に由来している

 ことわざの「砂上の楼閣」は、「見かけはりっぱであるが、基礎がしっかりしていないために長く維持できない物事のたとえ。また、実現不可能なことのたとえ」ですが、これは、以下の通り、イエスの言葉から来ています。
『マタイの福音書』 7章26-27節
 また、私のこれらの言葉を聞いてれを行わない者はみな、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができます。
 雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまいました。しかも、それはひどい倒れ方でした。」
   (※参考:Wikipedia「山上の垂訓」




チェルノブイリは「ニガヨモギ」という意味ではない

 『ヨハネの黙示録』の以下の記述に関して、
「これは、1986年にチェルノブイリで起きた原発事故を予言したものである。『チェルノブイリ』は『ニガヨモギ』と言う意味なのだ」というような話をよく聞きますが、実は、「チェルノブイリ」は「ニガヨモギ」という意味ではありません。
『ヨハネの黙示録』 8章10-11節
 第3の御使いがラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が天から落ちて来て、川々の3分の1とその水源に落ちた。
 この星の名は、ニガヨモギと呼ばれ、川の水の3分の1はニガヨモギのようになった。水が苦くなったので、その水のために多くの人が死んだ。
 チェルノブイリという都市名は、ウクライナ語で Artemisia vulgaris(オオヨモギ) を意味するチョルノブイリから来ています。

 一方、黙示録の「ニガヨモギ」は、Artemisia vulgaris(オオヨモギ) ではないのもちろんのこと、現在、「ニガヨモギ」と呼ばれている Artemisia absinthium でもなく、Artemisia judaica だとする説が有力です。

 以上、「チェルノブイリ」は、ニガヨモギと同じキク科ヨモギ属ではあっても、ニガヨモギではないのです。

 (※参考:Wikipedia「チェルノブイリ原子力発電所事故」e−yakusou.com 薬用植物一覧表「オオヨモギ」




ルシフェルは、名前から、神を表わす「エル」の称号が取られて「ルシファー」と呼ばれるようになっていない

 「堕天使ルシフェルは神に逆らって地獄に堕とされ、その際、名前から、神を表わす『エル』の称号が取られて、『ルシファー』と呼ばれるようになった」

 このような話を通俗書でたまに見かけますが、これはウソです。

 ルシファーという名称は、英語(Lucifer)からの音訳 に由来しており、フランス語やスペイン語では、次の通り、ルシフェルです。

   ○フランス語・・・ルシフェル(Lucifer
   ○スペイン語・・・ルシフェル(Lucifer)   (ちなみに、ラテン語ではルキフェル(Lucifer))

 つまり、ルシファーと呼ぶか、ルシフェルと呼ぶかは、「どの言語から音訳したものか」という違いでしかないのです。


 なお、Lucifer は元々、ラテン語で「光を帯びたもの」「光を掲げるもの」(lux 光 + -fer 帯びている、生ずる)、「光をもたらす者」(lux 光 + fero 運ぶ)を意味する語であり、当初は悪魔や堕天使を指す固有名詞ではありませんでした。

 それが、聖書のラテン語訳の際に、ヘブライ語の「明けの明星」に Lucifer が当てられ、イザヤ書の以下の記述と結びついて、悪魔や堕天使の名前とされるようになりました。
『イザヤ書』 14章12-14節
 暁の子、明けの明星よ、どうしてお前は天から落ちたのか。
 もろもろの国を倒した者よ、どうしてお前は地へと切り倒されたのか。
 お前は心の中で言った、
 「私は天に上ろう。神の星々のはるか上に、私は私の玉座を上げよう。
 私は、北の果ての、例祭の山に座そう。
 雲の濃い高みに上り、いと高き方に自らを擬そう」、と。
 しかし、お前は黄泉へと、穴の底へと落とされる。
 この記述は、バビロニア王かアッシリア王(サルゴン2世かネブカドネツァルであろうと言われる)について述べられたものですが、この記述の「明けの明星」を「ルシファー」に読みかえれば、「ルシファー」と言う存在が、神のようになろうとして、天から落とされたと読めます。

 このようにして、堕天使ルシファーは誕生したのでした。

 (※参考:Wikipedia「ルシファー」




イエスは馬小屋で生まれていない

 「イエスは馬小屋で生まれた」という話を良く聞きますが、実はこれ、誤りで、正確には「家畜小屋」です。

 イエスの誕生シーンが記載されているのは、四福音書の内の『ルカによる福音書』ですが、そこには、飼葉おけにイエスを寝かせたとの記述があるのみで(12章7節)、具体的にどこであるとは記載されていません。

 より詳しく描かれているのは『偽マタイ福音書』ですが、そこには、マリアが洞窟でイエスを生み、その後、家畜小屋に入ってイエスを飼葉おけに寝かせると、牡牛とロバがイエスを崇めたと記載されています。

 この記述を信頼すると、イエスが生まれたのは洞窟で、その後、家畜小屋に移されたことになり、そこにいた動物は、牝牛とロバです。

 ただし、生まれた後、飼葉おけに寝かせられたことから、「イエスが家畜小屋で生まれた」という伝承が生まれ、また、西洋のキリスト誕生を主題にした絵画では、上記記述から、牛とロバが描かれるようになりました。

「サン・マルコ修道院壁画」


バルミジャニーノ「聖家族」

 この、「家畜小屋」を表わす際に使われる英語は「stable」です。この単語は、本来、「家畜小屋」一般を指す単語でしたが、現在では「馬小屋」の意味で使うことが一般的になっています。

 そして、「イエスが stable で生まれた」と言う場合は、「馬小屋」ではなく「家畜小屋」を指すはずですが、上述のような事情を知らずに訳すと「馬小屋」になってしまい、それが日本で広まり定着してしまったようです。


 (※参考:「イエスは馬小屋で生まれたか?」)




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