ゾロアスター教の終末論

 ゾロアスター教の終末論には以下の要素が描かれ、キリスト教の「ヨハネの黙示録」と非常に似た終末論となっています。

   ○救世主の到来
   ○善と悪との最終戦争
   ○死者の復活と最後の審判
   ○至福の世界の到来と永遠の命

 一般に、ゾロアスター教の終末論がキリスト教の終末論の源流になったとされていますが、その影響関係の詳細については分かっていません。



 ゾロアスター教の終末論は以下の通りです。

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 ゾロアスター教は、ザラスシュトラ(ゾロアスターはそのギリシャ名)が紀元前12世紀から紀元前7世紀頃(※正確な年代は不明で、書籍よって様々)、中央アジア〜イラン高原東部で創始した宗教です。

 ザラスシュトラはアフラ・マズダー(「叡智の主」という意味)が唯一の至高神であるとして、当時、古代アーリア人の間で信仰されていた多神教の神々を否定、また、この世は善(アフラ・マズダー)と悪(悪霊アンラ・マンユ)が闘争する場であるとする善悪二元論を説きました。

 そして、この世を善と悪の闘争の場であるとする二元論的世界観は、善悪の最終決着としての「世界の終末」を説きます。

 その「世界の終末」では、地底から溶岩(アフラ・マズダーの火ともされる)が噴出し、全人類はこの中に巻き込まれます。ただ、善人にはその溶岩がミルクのように感じられ、悪人には溶岩が耐えがたい熱さに感じられるとされます。
 これが「最後の審判」であり、これに耐えることができた者だけ義者とされ、無限にして完全な善に包まれた世界へと行くことができるとしました。


 なお、この「世界の終末」はザラスシュトラにとっては明日にでも起こると予感されていたようですが、実際には起こりませんでした。そこで、後代の神官たちは、「いつまで待てば世界の終末は訪れるのか」、「その時に信者たちを指導してくれるのは誰なのか」などの問題に答えるため、救世主思想を導き出します。

 それは、保存されていたザラスシュトラの精子によって妊娠した処女から生まれたサオシュヤント(救世主)が世の終わりに出現し、邪悪と無知の力に立ち向かうように人々を導くというものでした。

 この救世主思想を盛り込んだ後の終末論は次の通りです。

 サオシュヤント(救世主)はアフラ・マズダーと連合軍を組織して、悪霊アンラ・マンユとの最終戦争を行い、これに勝利します。
 一方、地上では世界の誕生以来の死者が全員復活しますが、そこに天から彗星が降ってきて世界中のすべての鉱物が熔解し、復活した死者たちを飲み込みます。その間、義者は全く熱さを感じませんが、不義者は苦悶に泣き叫ぶことになります。
 これが「最後の審判」であり、3日間続いた後、これによって不義者の罪は浄化され、全員が新たな理想世界に生まれ変わることになります。


 なお、ゾロアスター教では、世界の歴史は3千年毎の4つの時代によって歴史が構成されるとされます。
@3千年
 霊的(メーノーグ)創造の期間で、この期間は全ての創造物が超感覚的状態にあります。
A3千年  物質的(ゲーティーク)創造の時代です。この時期に、超感覚的な状態にあった被造物は可視的状態へと移行します。
 また、この時期の始めにアンラ・マンユは善の世界に侵入しようと試みますが失敗し、地上は天国と何ら変わりない理想の状態のままにありました。
B3千年  この3千年はアンラ・マンユの侵入とともに始まり、この世界は善と悪の闘争の場となります。そして、この時、悪が侵入したため死と滅亡が生じたとされます。
C3千年  この3千年はザラスシュトラの出現に始まり、最後の審判で終わります。この時期には、世界の善・悪混合状態が分別されるとされます。
 なお、ザラスシュトラ後、3人の救世主(サオシュヤント)が千年の時を隔てて出現するとされます。
 ザラスシュトラが活動した時期はよく分かっていませんが、「紀元前12世紀から紀元前7世紀の間」とすると、その3千年後は「18世紀から23世紀」となり、その間に「世界の終末」が訪れることになります。




◆参考文献等
書 名 等 著 者 出 版 社
『ゾロアスター教』
 
青木健 講談社
『ゾロアスター教』
 
P・R・ハーツ
奥西峻介(訳)
青土社
『ゾロアスター教 神々への賛歌』
 
岡田明憲 平河出版社
『古代秘教の本』
 
  学研




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