<月読(つくよみの)命(みこと)の活躍する物語がない> 　月読(つくよみの)命(みこと)は、伊邪那岐(いざなきの)命(みこと)から自分が治める場所を告げられるのを最後に、その後、一切登場しません。あるのは、天照大御神(あまてらすおほみかみ)と須佐之男(すさのをの)命(みこと)の物語だけです。 　「三貴子(みはしらのうずのみこ)」と称するほど重要な神の一人にも関わらず、物語が一切、存在しないのは、月読(つくよみの)命(みこと)と須佐之男(すさのをの)命(みこと)が同一人物だからです。 <大気津比売(おほげつひめの)神を殺した神が、古事記と日本書紀の一書で一致していない> 　大気津比売(おほげつひめの)神を殺したのは、古事記では須佐之男(すさのをの)命(みこと)、日本書紀では月読(つくよみの)命(みこと)になっていますが、これは単に、同一人物の別名なので矛盾する記述とはなりません。 　　※大気津比売(おほげつひめの)神は、日本書紀では保食(うけもちの)神になっています。どちらも食物を掌る神。 <天照大御神(あまてらすおほみかみ)は須佐之男(すさのをの)命(みこと)が原因で隠れることになる>　（2009.6.13追記） 　天照大御神(あまてらすおほみかみ)は須佐之男(すさのをの)命(みこと)が原因で天の岩屋戸に隠れることになりますが、日食で太陽が隠れる原因となるのは月。天の岩屋戸の物語では、太陽である天照大御神(あまてらすおほみかみ)に対して、須佐之男(すさのをの)命(みこと)が月の役割を担っています。 <須佐之男(すさのを)系の物語で、月を象徴するウサギが登場する> 　「稲羽(いなば)の素兎(しろうさぎ)」の物語では、大国主(おほくにぬしの)命(みこと)が痛み苦しんでいたウサギを助け、そのウサギから「あの大勢の神々は、きっと八上比売(やがみひめ)を娶(めと)ることができないでしょう。袋を背負ってはいますが、あなた様が娶(めと)られるでしょう。」と告げられています。 　ウサギが象徴するものは月で、この話は、須佐之男(すさのを)系が月の祝福を受けていることを示しています。 　一方、天照(あまてらす)系の物語では、太陽を象徴するカラスが登場します。神武(じんむ)天皇の東征の際、道案内をした八咫烏(やたがらす)です。 　古代中国でも三本足のカラスは太陽の象徴とされ、また、ギリシャ神話の太陽神アポロンもカラスを使役します。おそらく、太陽の黒点をカラスに見立てていたのでしょう。 　つまり、天照(あまてらす)系が太陽なら、須佐之男(すさのを)系は月で、やはり、月との関係が示されているのです。