5-(50).伊勢神宮には何故、「風」、「土」とつく宮があるのか?(その2)


※当記事は「5-(49).伊勢神宮には何故、「風」、「土」とつく宮があるのか?(その1)」の続きです。



 前記事では、外宮(げくう)で四大元素の「風」、「土」、「火」、「水」に関連する宮を探しましたが、今回は、引き続き、内宮(ないくう)について探してみます。

 まず、「風」ですが、これは、内宮(ないくう)の別宮の一つである風日祈(かぜひのみの)宮があります。

 そして、「火」です。
 外宮(げくう)では忌火屋殿(いみびやでん)を「火」を象徴する建物としましたが、内宮(ないくう)にも同じく忌火屋殿(いみびやでん)があります。

 次に「水」です。
 内宮(ないくう)には外宮(げくう)のような井戸を祀った神社はありませんが、探してみると、滝祭(たきまつりの)神がありました。
 御手洗場のすぐ近くで、垣と門だけで社殿はなく、三角錐(?)(正面から見ると三角形の形になっている)の形をした石が祀られています。
 滝祭(たきまつりの)神は、内宮(ないくう)の所管社で別宮ではないのですが、別宮に準じて祭典が行われるなど特別扱いをされているようです。

 最後に「土」です。
 探してみると、宮域にはなく、宇治橋から少し離れたところに土橋姫(あえどはしひめ)神社があります。(※宇治橋は五十鈴川にかけられた木造の大きな橋で、内宮(ないくう)にお参りする時には、宮域に入るためにこの橋を渡ることになります。)

 祭神は宇治橋鎮守(うじばしのまもりの)神で、その名の通り、宇治橋を守っている神様。饗土(あえど)とは、内宮(ないくう)の宮域四方の境に悪しきものが入って来ないよう防ぎお祭りをする所のことで、宇治橋渡始式の際にはこの神社の前で祭典が行われます。

 なお、この饗土橋姫(あえどはしひめ)神社は、現在、宇治橋の西150mのところにありますが、これは明治43年の国道改修の際に移されたもので、もともとは宇治橋のすぐそばにあったようです。

 正確な元の位置はよく分からなかったのですが、江戸時代の絵画でそれらしいものが描かれていたものがあったので掲載しておきます。
 赤丸で囲んだものがそうです。
伊勢参詣曼陀羅(三井文庫)

 さて、一応、内宮(ないくう)でも、「風」、「土」、「火」、「水」を表すと思われるものを見つけることができました。
 この神社などの配置は以下の通りとなります(※左が北となります)。

  

 赤丸は、土橋姫(あえどはしひめ)神社がかつて、あったであろう場所です。

 そして、下のものは、前記事で掲載した外宮(げくう)の地図です(※こちらは上が北)。

    

 内宮(ないくう)の方の配置が、外宮(げくう)のものと比べて、反時計回りに90度回転させた配置になっていることが分かります。

 ただし、外宮(げくう)下御井(しものみいの)神社は、あくまで上御井(かみのみいの)神社のピンチヒッター的な役割であり、その上御井(かみのみいの)神社は正宮の西、約400mのところにありますから、方角を意識した配置になっていると考えることは難しいようです。


 ただ、確実に言えることは、「風」と「土」については、正宮を守る役目を持っているということです。

 内宮(ないくう)について言えば、風日祈(かぜひのみの)宮と土橋姫(あえどはしひめ)神社は、上図の通り、内宮(ないくう)へと向かう橋の手前に配置されています。これは、橋を渡って何らかの害が侵入するのを防ぐためでしょう。

 土橋姫(あえどはしひめ)神社に、まさにこの役割があることは上記の説明の通りですし、一方、風日祈(かぜひのみの)宮は、元寇の際、神風を起こす霊験を示したとされ、まさに、日本の国に外敵が侵入するのを防いでいます。

 また、外宮(げくう)についても、風宮(かぜのみや)土宮(つちのみや)は、本宮へ向かう橋の手前に作られています。
 その橋は現在は小さなものですが、南北朝時代の絵画を見ると、当時はそうでもなかったようです。
伊勢両宮曼陀羅(正暦寺)
 現在は無い大きな池があり、その池を渡る手前に風宮(かぜのみや)土宮(つちのみや)があることが分かります。

 なお、気になるのは、青字で記載した御井の部分です。現在は、下御井(しものみいの)神社と上御井(かみのみいの)神社に分かれていますが、もともとは、この位置に井戸、もしくは湧水があったのでしょう。



 以上、「風」と「土」については、正宮を守る役目を持っているというのは間違いないでしょう。

 また、「水」と「火」についても、それぞれ、御井(みいの)神社・滝祭(たきまつりの)神と忌火屋殿(いみびやでん)があり、内宮(ないくう)外宮(げくう)共に、風・土・水・火が揃うように意識されているように思えます。

 そして、その元となるものは、日本神話にも五行思想にもありませんし、やはり、西洋の四大元素から来ているのではないかと思われます。






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