「セフィロトの樹」の解釈(その1)

●セフィロトの樹

 「セフィロトの樹」とは、「生命の樹」とも言われ、ユダヤ教の密教とも言うべき神秘主義思想のカバラで使用される図象の一つであり、カバラの奥義であると言われています。

 「セフィロトの樹」は、宇宙を支配する法則を徴表したものであると言われ、また、人が神の元へと至るためにとるべき手段・過程を表したものであるとされることもされます。

 なお、カバラとは「受け取り・伝承」という意味で、その根底には、神秘的な知識や知恵は個人が独自に見つけ出すものではなく、一なる神から与えられるものであるという思想があります。


 「セフィロトの樹」は通常、右の図のような形で描かれます。

 丸形のものは「セフィラ」と呼ばれ、そのセフィラをつなぐラインは「パス」と言い、「セフィロトの樹」は10個のセフィラと22のパスで構成されます。

 なお、セフィラには「容器、光、神の特性」といった意味があり、その複数形がセフィロトです。

 そして、各セフィラに記載してあるカタカナ名はヘブライ語で、日本語はその訳ですが、ヘブライ語名には複数の意味がある場合があり、日本語名は右図と違っているものが使用されているものもあります。

 参考に、セフィラ名の用語解説を掲示しておきます。
セフィラ名 解説
ケテル 王冠のセフィラ。
コクマー 知恵のセフィラ。英知と啓示を意味する。ホクマと呼ばれることも。
ビナー 理解のセフィラ。時に理性と呼ばれる。
  ダァト 知識を意味するセフィラ。隠れた叡智とされ、通常、描かれない。
ケセド 慈悲のセフィラ。ヘセッド、ゲドウラと呼ばれることも。
ゲブラー 文字通りに訳せば強さ、又は力で、峻厳のセフィラと呼ばれる。判断のセフィラとされることも。
ティファレト 美のセフィラ。時に飾りと言われる。
ネツァク 勝利のセフィラ。また、永遠、持続とも呼ばれる。
ホド 栄光のセフィラ。反響、共鳴する光輝を意味する。
イエソド 基礎を意味するセフィラ
10 マルクト 王国を意味するセフィラ

 また、上下を貫く三つのラインは、真ん中が「均衡の柱」、右が「慈悲の柱」、左が「峻厳の柱」と言われ、また、@ケテル、Aコクマー、Bビナーが構成する三角形を「至高世界」、Cケセド、Dゲブラー、Eティファレトが構成する三角形を「中高世界」、Fネツァク、Gホド、Hイエソドが構成する三角形を「下層世界」と言います。(※これらの三角形は、別の呼び方で呼ばれる場合もあります)


●均衡の柱(@ケテル・Iマルクト)

 さて、それでは、この「セフィロトの樹」の私なりの解釈を記載したいと思います。

 結論から言えば、「セフィロトの樹」は「神による人間創造の計画書」です。より具体的に言うと、天地創造後、アダムに始まった人間創造という神の御技が完成するまでの青写真が描かれたものです。

 まず、真ん中の「均衡の柱」を見てみましょう。

 一番下のIマルクト(王国)はエデンの園を示し、@ケテル(王冠)は「ヨハネの黙示録」に描かれた新しいエルサレム(神の国)を表しています。

 つまり、この「均衡の柱」を最下部から最上部へと上昇することは、エデンの園を追放された人類が新しいエルサレムへとたどりつくことを意味し、それは、不完全な創造物である人間が完成されたものへと成長することをも意味します。

 また、王冠は勝利の証しであり、悪魔などの誘惑に負けずに人間としての己を完成させることができたこと意味します。「ヨハネの黙示録」にも次のような記述があります。
<ヨハネの黙示録22章3-4節>
 もはや、呪われるものは何もない。神と小羊との御座が都の中にあって、そのしもべたちは神に仕え、神の御顔を仰ぎ見る。また、彼らの顔には神の名がついている。
 もはや夜がない。神である主が彼らを照らされるので、彼らにはともしびの光も太陽の光もいらない。彼らは永遠に王である
 これは、天から降りてくる新しいエルサレムの様子が描かれたものですが、「彼らは永遠に王である」とあります。人間として完成することができた者は、王として新しいエルサレムで暮らすことができ、そして、王を象徴するものは王冠です。

 さらに、「ヨハネの黙示録」では、新しいエルサレムには生命の木があると記述されており、そのことは、「セフィロトの樹」が「生命の樹」と呼ばれることとも重なってきます。



 ※記事「『セフィロトの樹』の解釈(その2)』に続く




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