○『古事記』と同じ日本国の歴史書である『日本書紀』は、養老4年(720)に完成しているが、同時期に似た内容の歴史書を2つも編纂する意味がない。
○歴史書を作成する場合、編纂時の天皇の先代までの歴史を記載するのが通常であると思われるが(ただし、編纂にかかる期間が長ければ、それ以降まで記載することはあるだろう)、『古事記』は、33代推古天皇(554-628)までしか記載していない。
ちなみに、『日本書紀』は、40代天武天皇の時に着手され、完成は43代元明天皇の時。そして、記載されているのは、41代持統天皇(645-703)までである。
○『古事記』には「上代特殊仮名遣い」という、奈良時代に使用されていた言葉遣いに沿って漢字が当てられている。同様の書物に『万葉集』があるが、「モ」について甲類・乙類の区別があるのは『古事記』のみで、それは、『古事記』の作成が、実は、『万葉集』よりも古いからだと考えられる。
これを前提にすれば、『万葉集』は7世紀後半から8世紀後半頃にかけて編まれたとされているので、『古事記』の成立は7世紀後半以前となる。
(※「上代特殊仮名遣い」の説明については、記事「6-(7).上代特殊仮名遣い」を参照) |