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現代語訳 |
訓み下し文 |
古事記 |
「ソラツヒコの泣き悲しんでおられるのは、どういうわけですか」
「私があなた様のために善い計画を立ててさし上げましょう」
「私がこの船を押し流しましたら、しばらくそのままお進みなさいませ。よい潮路がありましょう。そこでその潮路に乗ってお進みになったならば、魚の鱗のように家を並べて造った宮殿があって、それがワタツミノ神の宮殿です。その神の宮の御門においでになりましたら、傍らの泉のほとりに神聖な桂の木があるでしょう。そしてその木の上にいらっしゃれば、その海神の女があなたのお姿を見て、とりはからってくれましょう」 |
「何にぞ虚空津日高の泣き患ひたまふ所由は」
「我、汝命の為に善き議をなさむ」
「我その船を押し流さば、差暫し往でませ。味し御路あらむ。すなはちその道に乗りて往でまさば、魚鱗の如造れる宮室、それ綿津見神の宮ぞ。その神の御門に到りましなば、傍の井の上に湯津香木あらむ。故、その木の上に坐さば、その海神の女見て相議らむぞ」 |
日本書紀
本文 |
「何のためにこんなところで悲しんでいるのですか」
「心配には及びません。私があなたのために考えてあげましょう」 |
「何の故ぞ此に在しまして愁へたまへるや」
「復な憂へましそ。吾当に汝の為に計らむ」 |
日本書紀
一書(第一) |
「あなたは誰ですが。何故ここで悲しんでいますか」 |
「君は是誰者ぞ。何の故か此処に患へます」 |
日本書紀
一書(第三) |
※塩土老爺は登場するがセリフ無し。 |
日本書紀
一書(第四) |
「何故そんなに悲しまれるのですか」
「悲しまれますな。私が計り事をしてあげましょう」
「海神が乗る駿馬は八尋鰐です。これがその鰭を立てて橘の小戸におります。私が彼と一緒になって計り事をしましょう」 |
「何の故ぞ、若此愁へます」
「復な憂へましそ。吾、計らむ」
「海神の乗る駿馬は、八尋鰐なり。是其の鰭背を堅てて、橘の小戸に在り。吾当に彼者と共に策らむ」 |