法隆寺と『ヨハネの黙示録』(その3)

 ※当記事は、以下の記事からの続きです。

   ○「法隆寺と『ヨハネの黙示録』(その1)」
   ○「法隆寺と『ヨハネの黙示録』(その2)」



 (その1)では、法隆寺金堂の仏像等の配置が、7−4−12となっており、それは、イスラエルの神の幕屋(7−4−12)や『ヨハネの黙示録』に描かれた神の玉座(7−4−24)を前提としていると指摘しました。

 実は、法隆寺には、もう一つ、同じ構造を持っているものがあります。

 それは、国宝の「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」です。
 これは、古くは「四天王文錦」と呼ばれ、物部征伐の際に聖徳太子が使用した「錦の御旗」であるとも言われています。

 この旗には、大きな円が15個あり(上記、上段の図)、その円の中には、薄茶色の布に、馬に乗った武人が獅子を射ようとする様が描かれています。
 この、振り向きざまに騎射する仕草は、いわゆる「パルチアン・ショット」と呼ばれる中央アジア風のもので、このデザインはササン朝ペルシャ(226年 - 651年)の典型的な図像の1つです。

 ちなみに、以下のものは、ササン朝ペルシャ時代の皿ですが、「騎士が振り向きざまに獅子を打つ」という、基本的に同じモチーフになっています。
 大きく異なる点と言えば、「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」の方の馬には羽が付いていて、天馬になっているところぐらいでしょうか。 

鍍金銀製帝王騎馬獅子狩文皿
 このように、「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」はササン朝ペルシャの影響を強く受けていますが、馬の臀部には「山」と「吉」の文字があることから、ペルシャの影響を受けて、中国、または東アジアのどこかで織られたものだと考えられています。

 また、布地は本来、赤色だったとみられ、円帯は淡い紅色、馬と獅子などは緑で多彩な色が使用されていたようです。
<参考>


 ササン朝ペルシャの国教はゾロアスター教でしたが、ネストリウス派のキリスト教徒も多く居住していました。

 431年のエフェソス公会議で異端とされたことにより、ビザンティン帝国内で迫害され、ササン朝ペルシャまで流れてきたのです。

 右のものは、ササン朝〜イスラム時代初期のものとされるもので、教会の壁の一部だったと考えられています。、


 さて、この、「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」の模様の解釈をしてみましょう。

 まず、中央の7つの果実をつけた木は、「生命の樹(メノラー)」です。
 そして、四人の騎士と、その周りの円帯には四角が4つと円が20で、全部で24
 「7−4−24」という配置で、『ヨハネの黙示録』に描かれた神の玉座と同じ構図になっています。

 また、四人の騎士は、『ヨハネの黙示録』に登場する救世主に率いられた天の軍勢を表わしています。馬に羽がついているのがその証拠です。
『ヨハネの黙示録』 19章11節
 私は、天が開かれているのを見た。そして、一頭の白い馬が現れたではないか。その馬に乗っている騎士は、「信頼でき真実なる者」と呼ばれており、彼は正義をもって裁き、戦う。
 その目は火の炎であり、その(こうべ)には多くの冠が(いただ)かれていて、彼以外は誰も知らない1つの名前が書かれていた。
 彼は血で染められた衣を身にまとい、その名前は「神の言葉」と呼ばれた。
 
天の軍勢が、白く清い麻布の衣を身につけ、白い馬に乗って彼に従っていた
 彼の口からは鋭い太刀が出ている。その太刀で諸民族を打つためである。この者が、鉄の杖でもって彼らを支配する。また、この者が、全能者なる神の激した怒りの葡萄酒の酒ぶねを踏む。
 その者の衣にも(もも)にも、「王たちの王、主たちの主」という名前が書かれている。
 〜(中略)〜
 
私はまた、かの獣と地上の王たちとその軍勢とが、馬に乗った騎士とその軍勢とに戦いを挑むために、結集しているのを見た。
 しかし、獣は捕らえられた。また、この獣の面前でもろもろの(しるし)を行って、獣の刻印を受けた者たちや獣の像を礼拝する者たちを惑わしたかの偽預言者も、獣と一緒に捕らえられた。これら両者は、生きながらに、硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。
 この記述で、最初に描かれている「信頼でき真実なる者」と呼ばれている者は、救世主(再臨のキリスト)です。そして、その救世主には天の軍勢が従っています。

 また、この天の軍勢に、獣と地上の王たちが戦いと挑むと記載されていますが、この「獣と地上の王たち」が「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」では、獅子として表現されています。

 そして、「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」の中央上部に描かれている「七つの果実をつけた木」は、「生命の樹」だけでなく、救世主そのものも表わしています。
 『ヨハネの黙示録』では、キリストは「七つの角と七つの目を持った小羊」として表現されており(5章6節)、「7」という数字を象徴として持つ完成された存在だからです。

 ちなみに、上記『ヨハネの黙示録』の記述では、武器として太刀しか登場しませんが、他に次のような記述もあります。
『ヨハネの黙示録』 6章1-2節
 また私は、見た。小羊が7つの封印の1つを解いたとき、4つの生き物の1つが雷のような声で「来なさい」と言うのを私は聞いた。
 私は見た。見よ。
白い馬であった。それに乗っている者はを持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上にさらに勝利を得ようとして出て行った。
 ここで描かれているのは、再臨するキリストがこの世へと転生して行く姿ですが、その者は、白い馬に乗り、弓を持っています。


 以上、「四騎(しき)獅子狩(ししかり)(もんの)(にしき)」には、『ヨハネの黙示録』に記載された、「救世主に率いられた天の軍勢」と「獣と地上の王たちの軍勢」との戦いのシーンが描かれているのです。


 なお、上述のように、馬の臀部には、「山」と「吉」という文字が描かれています。

 「山」は、記事「5-(37).案山子が象徴するもの」に記載したように、三位一体を表わす漢字です。(※詳細は、該当記事を参照願います)

 一方、「吉」の方は、「吉」を分解すると「十」+「一口」となります。「十」は十字架。「一口」は、「口」に「人数」という意味があるように(※『三省堂漢和辞典』長澤規矩矢・小学館)、「一人」ということです。
 つまり、「吉」は、「十字架と一人」を意味し、「一人」の方は「神の独り子」を表わしているのです。


 以上、記事「法隆寺と『ヨハネの黙示録』(その1)」から(その2)、(その3)と記述してきたように、法隆寺は『ヨハネの黙示録』の象徴が多々見受けられる寺です。

 最後に、もう1つ、『ヨハネの黙示録』が元となっていると思われるモノを見て終わりにしたいと思います。

 以下は、法隆寺五重塔の飾り部分(相輪(そうりん))の写真です。

 下部に注目すると、鎌が設置されているのが分かります。写真では分かりにくいですが、全部で四つ、四方向に設置されています。(ちなみに、右側の鎌には鳥がとまっています)

 この鎌は、法隆寺の七不思議の1つとされ、「雷避けのまじないである」という説があるようです。

 しかし、当HPの常連の方なら、すぐにピンと来たことでしょう。

 鎌と言えば、宇迦之御魂(うかのみたまの)神が持つものも鎌。
 この宇迦之御魂(うかのみたまの)神の正体は、『ヨハネの黙示録』に記載された「再臨のキリスト」であることを記事「5-(32).稲荷神と『ヨハネの黙示録』(その1)」で指摘しました。

 宇迦之御魂(うかのみたまの)神が鎌を持っているのは、『ヨハネの黙示録』の以下の記述に由来し、良い実を実らせることが出来た人々(=穀物)を刈り入れる為なのです。
『ヨハネの黙示録』 14章14-16節
 また、私は見た。見よ、雲が起こり、その雲には人の子のような方が乗っておられた。頭には金の冠をかぶり、手には鋭い鎌を持っておられた
 すると、もうひとりの御使いが聖所から出て来て、雲に乗っておられる方に向かって大声で叫んだ。
「鎌を入れて刈り取って下さい。地の穀物は実ったので、刈り入れる時が来ましたから。」
 そこで、雲に乗っておられる方が、地に鎌を入れると地は刈り取られた。
 さらに、この記述は次のように続きます。
『ヨハネの黙示録』 14章17-20節
 また、もう一人別の天使が、天にある聖所から出て来た。その天使も鋭い鎌を持っていた。
 さらにもう一人、火を支配する権能を持っている天使が祭壇から出て来た。この天使が大声で先の、鋭い鎌を持っている天使に向かって叫んだ。
「あなたの鋭い鎌を入れ、地上の葡萄の房を刈り集めよ。葡萄の実は十分に熟しているのだから」
 そこで、その天使は鎌を地上に投げ入れ、地上の葡萄の刈り集め、神の怒りの巨大な酒ぶねの中に投げ入れた。
 その酒ぶねは都の外で踏まれた。すると、酒ぶねからは血が、馬どものくつわに達する深さまで、1600スタディオンに渡って流れでた。
 鎌を持った天使が出てきて、こちらの天使は、良い実を実らせることを出来なかった人々(=葡萄)を刈り入れて酒ぶねに入れ、その後、その酒ぶねは踏まれることになります。

 つまり、『ヨハネの黙示録』において鎌は、この世の終末において人々を刈り入れる道具なのです。

 よって、法隆寺において、五重塔の相輪(そうりん)という高い位置に鎌が設置されているのは、そのような目に触れる場所に設置することにより、人々に対する以下の警告を発しているのではないかと思われます。
 いずれ、刈り入れの時が来て、良い実はキリストによって刈り入れられて神の御国で暮らすことになるが、一方、悪い実は天使によって刈り入れられ、酒ぶねで踏まれることになる


 以上、法隆寺における『ヨハネの黙示録』に基づいた配置等を見て来ました。

 記事「5-(32).稲荷神と『ヨハネの黙示録』(その1)」の内容も合わせれば、『ヨハネの黙示録』を反映した神社が伏見稲荷大社、そして、その寺版が法隆寺であると言えるのではないかと思います。




◆参考文献等
書 名 等 著 者 出 版 社
『飛鳥・法隆寺の謎』
テレビ東京(編) 祥伝社





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